2005年12月26日
『タックスハウス』の間違い。
タックスハウスさんのDVDで言ってること本当なの? って問い合わせが、いくつかきました。つまり、「2010年にサラリーマンも確定申告(年末調整が無くなる)になって、そこにサラリーマンを中心とした巨大マーケットが出来、そして日本の会計事務所も、アメリカのH&Rブロックのように、住宅ローンなどの金融業でビジネスをするのか?」っていうのが、大方の皆さんの質問でしたので、一つ一つについてお答えします。
ある税理士さんから7つの質問を受けたので、それをここに再現いたします。
Q.1
日本もアメリカのように、サラリーマンも確定申告をするようになるのですか?
A.1
当社で発行している月刊シリエズ編集部で調べた限りでは、2010年から具体的なことが決まっているということは無いというのが関係機関からの回答でした。しかし、可能性はあるかというと、私は“ある”と思います。
Q2
日本の会計事務所が、アメリカのH&Rブロックのようになるって話は本当ですか?
A.2
まず、根本的な間違いがあるので正しておきますが、H&Rブロックは会計事務所ではありません。会計事務所の定義を私なりにすると、「税理士または公認会計士の行う、「会計」「税務」「記帳」および「経営コンサル」などを中小企業や個人事業者向けに有資格者が行う事業体」となり、H&Rブロックは会計事務所に当たりません。アメリカには、EA(日本の税理士に近い)とCPA(公認会計士)がいますが、H&Rブロックで働くEAやCPAはほとんどいません。というより、私が取材した限りゼロでした。つまり、H&Rブロックは、個人のサラリーマンなどを対象とした申告代行会社であることは事実ですが、無資格者の集団です。
Q.3
個人向けの金融ビジネスが、盛んになるということについてはどう思いますか? また、H&Rブロックは金融ビジネスを行っているんですか?
A.3
確かに、個人向け金融ビジネスが盛んになるし、住宅ローンのような斡旋などもこれからの金融マーケットを考えれば面白い市場だと考えられます。もちろん、H&Rブロックはそのようなビジネスを行っています。しかし、もう一度触れますが、H&Rブロックは会計事務所ではありません。つまり、アメリカでは、H&Rブロックと同じマーケットには会計事務所の本来的なお客様は存在しないということで、ほとんどの会計事務所はこうした個人に向けてのビジネスを敬遠しました。もちろん、最初は面白そうだと手を出した連中もいます。しかし、これらは会計事務所にとって儲からないし、リスキーな分野だと気づいたんですね。
Q.4
H&Rブロックで申告代行をやっているということは、会計事務所ということではないんですか?
A.4
とても良い質問です。アメリカと日本では大きく違う点として、アメリカでは「税務相談」や「税務申告」は、EA(税理士)やCPA(公認会計士)の独占業務ではないんです。だから誰がやってもいいんですよ。CPAは、監査が中心ですし、EAは中小企業の記帳や給与計算それにコンサルティングが中心です。で、EAが無資格者より資格を与えられている範囲としては、内国歳入庁(IRS、税務署と同じです)に対して、納税者の代弁者として対抗が出来るくらいです。もちろんこの権利は、CPAや弁護士にも与えられています。従って、アメリカは日本と法的環境が違うということですね。
Q.5
なぜ、アメリカの会計事務所は、H&Rブロックのようなマーケットに参入しなかったのですか?
A.5
どのような人が、H&Rブロックに来ているのかといったことから説明しますと、あるCPAはこのような言い方をしました。「H&Rブロックの客は、シアーズやメーシーズなどでお買い物する客で、ニーマンマーカスやノードストロームでお買い物などしない連中だよ」といいました。これみんなデパートの話ですが、要は、お金の無い連中しか来ないし、せいぜい年収3万ドル(400万円以内)くらいの年収の人が相手だよ」って話をしました。要は、EAやCPAはお金持ちを相手にしなければ儲からないということでもあります。
Q.6
日本で仮に、サラリーマンも確定申告を行うようになると同じような巨大マーケットが出来、会計事務所が行うようになりますか?
A.6
答えは、NOです。絶対にありえませんし、会計事務所はこのマーケットに入るべきではありません。タックスハウスの森中さんは、2010年と自社のビデオの中で言っていますので、2010年がとても楽しみです。私はこのようなマーケットに入って会計事務所が成功することは絶対にありえないと思っています。理由は二つあります。ひとつは、日本人の文化環境が違うということです。簡単に言うと、アメリカではまともに文字の読めない人が、17、8%近くいるといわれています。また、数字は忘れましたが、年間にいくらか以上の収入があると全員確定申告しなければなりません。脱税に対しては、日本のようにいい加減ではなく、欧米はとても厳しいので、基本的にはみんなちゃんと申告します。そこで考えてほしいのですが、文字の読めない人やまともにに英語の出来ない人が難しい税金の申告書を紐解いて、一生懸命申告用紙に向かうと思いますか?安いんだったら、お願いしようというわけで、H&Rブロックに行きます。隣にスターバックスコーヒーなんかあれば、友達とおしゃべりしている間に申告書が出来上がっています。それで仮に還付金が、5万円だとすると、これを4月15日以降に受け取るより、今貰いたいということで、少し金利を取られてキャッシングします。これも金融です。話がそれましたが、要は日本の普通の人は、まともに日本語が読めるし、わざわざ申告代行屋さんのところに行くことはほとんど無いと思います。また、もうひとつアメリカと大きな違いを考えなければなりませんが、アメリカでH&Rブロックが成長した時期と環境がまるで違います。つまり、これからはインターネットの時代ですから、個人の確定申告はほとんどがインターネットに取って代わられると思います。
Q.7
会計事務所はどうすればいいのですか?
A.7
いつもそうですが、大きな変化の中でも自分たちの基本的役割を見失わないことです。つまり、中小企業のビジネスのサポートを、会計や税務を通じて行うことが大切です。それと、どうしても将来個人のマーケットも狙いたいということで、そうしたことを視野に入れてもいいのですが、会計事務所は金持ちを相手に行うビジネスです。だからこそ、収入が絶えないのです。住宅ローンや貸付などのビジネスは確かに巨大ですが、巨大ということはもっともっと大きな資本が参入するし、無資格者の修羅場となるということを肝に銘じなくてはなりません。ある米国CPAは、「会計事務所は、金融や投資ファンドのビジネスが出来るほど器用な連中じゃないんだよ」なんて、おどけて言いましたが、彼が言いたかったのは、ビジネスの基本に忠実であれということだと思います。
投稿者 : 広瀬 元義 [広瀬元義の社長日記]









